季節に合わせた旬の食材を使うのが日本料理の基本
世界的にも珍しく4つの季節が巡る四季がある日本の伝統的な料理では、季節を感じる旬の食材を使うのが基本となります。世界遺産に登録され、世界の方から人気を集める和食の中でも、伝統と格式ある日本料理は季節の食材を目でも楽しみ、味わって楽しむ、古から続く風流な食文化と調理法が受け継がれてきました。
そのため、日本料理に使われる代表的な食材も、春夏秋冬と季節に応じて変化していき、また、同じ季節でも月や時期によって登場する食材は変わってきます。その時期しか味わえない季節限定、期間限定の食材は味わいもよく、栄養価も高いうえ、季節の移ろいを感じさせてくれる日本ならではの食文化を楽しめます。
春の代表的な食材
春に使われる食材は寒い冬から目覚めた、春の息吹を感じられる食材が豊富です。雪の中から芽を出した苦みのあるふきのとうやこごみ、たらの芽などの山菜をはじめ、暖かさが増してくれば筍も登場します。山の幸だけでなく、春の時期は美しい桜色をした鯛もよく使われる代表的な食材です。山菜は採れ立てを天ぷらに、筍は木の芽と一緒に筍ご飯にしたり、木の芽和えなどのお酢の物や和え物をはじめ、炊き合わせなどでもよく登場します。
家庭料理のようにしょっぱく煮るのではなく、だしと薄口しょうゆなどで、筍の色合いを美しく残すのが日本料理の技です。鯛は土鍋を使って鯛めしにしたり、蒸し物などで供されることが多いかもしれません。
夏の代表的な食材
夏には鰻や穴子をはじめ、関西エリアでは鱧も旬の魚として楽しまれる時期です。
鰻というと蒲焼きやうな重、鰻丼などが代表的ですが、料亭などの場合は鰻と夏が旬のキュウリを酢の物にしたうざくや、鰻の白焼きをワサビなどでシンプルに頂いたり、鰻を入れた贅沢な茶わん蒸しなども供されます。穴子も酢の物に添えるほか、天ぷらなどの揚げ物にされることが少なくありません。
鱧は関東エリアではあまりなじみがありませんが、高級食材として鱧と梅干しを敢えて夏にさっぱりと頂ける和え物や、鱧さしなど様々な調理法で楽しまれます。
また、猛暑が来る前の梅雨時期には川魚である鮎を使った料理が登場する機会も増えるほか、脂がのった金目鯛の煮つけなども美味しい時期です。
秋の代表的な食材
秋は食欲の秋ともいわれるように、山の幸、海の幸と食材の宝庫の時期です。9月の栗ごはんをはじめ、10月から11月にかけては、しめじなどのキノコ類が美味しくなり、高級食材であるマツタケを使った炊き込みご飯や土瓶蒸しなどが登場します。
銀杏が黄色く紅葉する時期には、ぎんなんの素揚げやぎんなんご飯、銀杏を入れたお澄ましなども旬を感じる一品です。
秋といえば、秋刀魚やサバなどの脂の乗った青魚をイメージされる方も多いことでしょう。家庭で作る和食なら、秋刀魚の塩焼きやサバの煮つけなどが秋を感じる代表的なお料理になることでしょう。
もっとも、高級な日本料理店では、あまり登場しないかもしれません。というのは、秋刀魚やサバは大衆魚に数えられるからです。この時期の魚としては脂が乗った秋鮭やホタテなどの食材が登場する機会が多いかもしれません。
冬の代表的な食材
寒い冬の時期も、日本では旬を迎える食材が豊富にあります。野菜では大根やかぶら、春菊や白菜、ネギなどが美味しい時期で、ネギぬたや大根のたいたんをはじめ、お鍋の具材としてもよく登場します。
海の幸では鱈などの白身魚をはじめ、人気のカニや冬の醍醐味であるアンコウなども美味しい季節です。カニ鍋やアンコウ鍋をはじめ、カニの酢の物やお汁、アンコウを湯がいた刺身やアンコウの肝を使った贅沢で見た目にも美しい料理の数々が登場します。
味付けに使われる素材
日本料理では季節に応じて、季節を感じる代表的な食材が用いられ、その味わいや季節を感じさせてくれる見た目を損なわないように、素材の味や美しさを生かしながら調理がなされます。味付けも素材の味を生かし、引き出すことを基本としているのです。
そのベースとなるのが、日本料理には欠かせないだしです。化学的なものは用いず、天然素材から丁寧にとられただしは、旬の素材の味を邪魔することなく、しかも、じっくりと染み渡るような味わいを印象づけてくれます。
日本料理で味わいのベースとなるだしに使われる代表的な材料は、鰹節、昆布、干し椎茸です。これに加えてお店や地域、料理の種類などによってサバ節やいりこなどがプラスされることもあります。丁寧にとられただしに加えて、味のアクセントをつけてくれる素材は、日本の伝統的な調味料である醤油や味噌といった発酵調味料や、海水から作られる塩と、味に甘みとまろやかさを与え、料理のツヤを出してくれる砂糖などのシンプルなものです。醤油や味噌は大豆と小麦粉、塩を基本に作られており、日本の伝統食材でもある豆の風味がふんわりと香る美味しい料理に仕上げてくれます。
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